相次ぐ食品値上げ バイオエタノール人気が影響

果汁飲料やマヨネーズなど、食卓でおなじみの製品の値上げが相次いでいる。原因の一つには石油代替燃料として注目を集めるバイオエタノールの世界的な需要拡大があげられる。バイオエタノール原料となるサトウキビやトウモロコシへの転作が世界規模で進み、大豆やオレンジの減産につながっている。製品価格への転嫁は今後も続く可能性がある。

トロピカーナ」「サンキスト」「バヤリース」「ミニッツメイド」「農協果汁」…。5月に入って果汁100%ジュースが相次いで値上げされた。値上げ幅は1割前後で、1リットルボトルなど大容量タイプが中心だが、500ミリリットルなどの中型サイズも一部製品で値上げの対象となった。

値上げの理由は、オレンジやグレープフルーツの産地である米フロリダ州でハリケーン被害が出たほか、中国やロシアなどの需要拡大がある。

それに拍車をかけているのがブラジルにおける転作だ。バイオエタノール原料として世界的に需要が拡大しているサトウキビの畑をつくるため、オレンジなどの畑がつぶされているという。

大手飲料メーカーの担当者は「オレンジ果汁の価格は、2年前の約3倍に高騰している」と頭を抱えている。

キユーピーが6月から17年ぶりにマヨネーズを値上げする背景にも、バイオエタノール需要の高まりがある。米国の穀倉地帯でも大豆からトウモロコシへの転作が進む一方、中国の大豆輸入が急増し、大豆や菜種からつくる食用油の価格が高騰。同社によると「平成7年当時と比べて、1.5倍以上になっている」という。

食用油はマヨネーズの7割を占める主原料であり、コスト削減にも限界があった。同社は、6月出荷分から、売れ筋の500グラムの家庭向けを税抜き参考価格で319円から350円に値上げするほか、業務用も同率で値上げする。

農林水産省によると、2005年の世界のバイオエタノール生産は4600万キロリットルと01年の1.5倍に達した。環境問題に対する関心が高まり、その後も世界的に需要拡大は続いている。

こうしたバイオエタノール人気の影響は、他の食品にも及びそうだ。例えば、食用油はさまざまな加工食品に使われており、今後も高騰が続けば、マヨネーズよりも原料に使う比率が小さい商品にも値上げが波及する可能性がある。

大豆は、豆腐や納豆のほか、しょうゆやみそなどの調味料の原料としても使われている。キッコーマンでは「先物取引などで原料調達を工夫しており、当面は値上げの予定はないが、原料高が今後も続けば、影響が出かねない」と警戒する。

また、トウモロコシやサトウキビも供給以上に需要が伸びているため、価格は上昇している。トウモロコシは乳牛や肉牛に与える飼料にも使われるため、牛乳や牛肉の値上がりにつながる恐れもある。